子どもを「モノで釣る」のは悪なのか?——ドーパミンを味方につけるご褒美の科学

目次

1.「テストで80点以上取れたら、ゲームを買ってあげる」という約束の是非

「うちの子、本当に勉強への意欲がなくて……。苦肉の策で『次の定期テストで5科目合計400点を超えたら、あなたが欲しがっているゲームソフトを買ってあげる』と約束しちゃいました。
そうしたら人が変わったように勉強し始めんですけど …親としては『モノで釣って勉強させる』ことに罪悪感があります。本当は勉強の楽しさに気づいて、自主的にやってほしいのに…」

保護者様から、面談の際によくいただくお悩みです。

まず、保護者様が直感的に感じている「モノで釣ることへの罪悪感」は、心理学的に完全に正しい感覚です。

「ご褒美で釣ってはいけない」という教育論は有名ですから、「このままだと、ご褒美がないと何もしない子になるんじゃ……」と不安になりますよね。

確かに、心理学の「アンダーマイニング効果」という考え方では、「ご褒美で釣る」ことにはリスクがあると言われています。

人間には、2種類のモチベーション(動機付け)があります。
一つは「勉強して新しいことを知るのは楽しい!もっと解きたい!」という、自分の内側から湧き出る「内発的動機付け」。もう一つが「ゲームがもらえるからやる」「怒られたくないからやる」という、外部からの報酬や罰による「外発的動機付け」です。

元々は「絵を描くこと自体が大好き(内発的動機)」だった子どもたちに、「上手に絵が描けたら、ご褒美にお菓子をあげるね(外発的動機)」と約束します。最初は喜んで絵を描きますが、ある日「今日からお菓子はなしね」とご褒美をストップすると、どうなったでしょうか。
なんと、子どもたちは「絵を描くこと自体をやめてしまった」のです。

つまり、最初は自分から楽しんでやっていたことでも、そこに「目的外の報酬(モノ)」を与え続けると、人間の脳は「この行動は、報酬をもらうための『取引(労働)』なんだ」と認識を書き換えてしまいます。その結果、本来持っていたはずの純粋な意欲(内発的動機)が破壊されてしまうのです。

これが「モノで釣る」ことの最大の罠です。だからこそ、教育者たちは「安易にご褒美をあげるな」と警告を鳴らすのです。

ですが、塾を経営し、多くの子どもたちを見てきた私の本音を言わせてください。

そもそも勉強へのやる気が1ミリもない子に、理想論だけで向き合っても、机には向かいませんよ。

やる気ゼロの状態から、重い腰を上げるための「起爆剤」としてなら、ご褒美は最強のツールにもなります。大切なのは、その「使い方」です。

大育進学センターでは、ご褒美を「劇薬」ではなく「良薬」に変えるための、ちょっとしたコツを大切にしています。


2. 「結果」ではなく「プロセス」にご褒美を

では、一切のご褒美を禁止すべきなのでしょうか?

現実問題として、「そもそも勉強への内発的動機なんか1ミリも持っていない(勉強が大嫌いな)中学生」に対して、「勉強の楽しさに気付いて勉強しなさい!」なんていくら言っても、無駄なのは明らかです。机に向かうことは絶対にありません。

モチベーションがゼロの子どもを最初のゼロから「イチ」へと動かすためには、やはり「外発的動機(ご褒美)」の力が不可欠です。重要なのは、『ご褒美の条件』を間違えないことです。

× 悪いご褒美:「次のテストで80点(結果)を取ったらゲームを買う」
○ 良いご褒美:「毎日英単語を10個覚えること(プロセス・行動)を1ヶ月続けられたら、ゲームを買う

「結果(点数)」に対してご褒美を与えると、子どもは点数を取ることだけが目的になります。すると、難しい問題に挑戦しなくなったり、最悪の場合はカンニングをしてでも点数を取りに行こうとします。

一方、「毎日10分机に向かう」「問題集を何ページ進める」といった「自分自身で100%コントロール可能な行動(プロセス)」に対してご褒美を設定すると、子どもはとりあえず行動を起こします。

行動を起こして手を動かし始めると、前回の記事でご紹介した「作業興奮」が起こり、徐々に「勉強そのもの」への抵抗感が薄れていきます。

これが「ドーパミンを味方につける」という状態です。


3. 「承認」という副作用のない最強のご褒美

ご褒美は「物理的なモノ(ゲームやお金)」である必要は全くありません。
もっと強力で、副作用がなく、、何度与えても副作用がないご褒美があります。

それが「大人からの承認(褒め言葉)」です。

当塾は、このプロでありたいと思っています。

■ 小さな努力を可視化して褒めちぎる
「テストの点数」を褒めるのではありません。

「今日は授業の10分前に来て単語のテスト勉強してたね。素晴らしいわ!」
「前はノートの字がぐちゃぐちゃして見にくかったのに、今日の数学の途中式、めっちゃ綺麗に揃ってるやん。先生感動したわ!」

というように、生徒の「小さな行動の変化」を具体的に認めて褒めます。

子どもにとって、自分が信頼している大人から「自分の努力をちゃんと見てくれている」と認められる快感。これこそが脳にドーパミンを出し、やる気を継続させるエネルギーとなるのです。

■ モノのご褒美を「フェードアウト」させる
最初は「モノ」で釣られて勉強を始めた子も、「行動」を褒められ続けると、徐々に変化が起きてきます。

点数が上がって周囲から認められる快感や、「昨日解けなかった問題が解ける喜び」を知ったりすると、いつの間にか「ゲームのために勉強する」という外発的動機から、「もっと成績を上げたい」「勉強って意外と悪くない」という内発的動機へとスライドしていきます。

このフェーズに入れば、モノのご褒美は静かに卒業です。


5. まとめとご提案

お子さんを「モノで釣る」ことは、劇薬のようなものです。使い方を間違えれば副作用で自発性を失いますが、正しい処方箋(プロセスの評価)に沿って使えば、頑固な「勉強嫌い」を治療する強力な引火剤になります。

最初はご褒美で釣っても構いません。「毎日これを続けたら、週末に好きなお菓子を買う」といった小さな約束から始めてみてください。
そして、約束を果たした時はお菓子を与えるだけでなく、「毎日約束通りに行動できたあなたが誇らしい!」と、最大の承認を与えてあげてください。

「家で親が褒めても、『はいはいワロス』と流されてしまう」「ご褒美の条件設定でいつも揉めてしまう」。

そんなお取扱いが難しい思春期のお子様をお持ちの橿原市の保護者の皆様。大育進学センターの講師たちに、その「承認(ご褒美)のシャワー」の役割をお任せください。

私たちは、生徒の心に火をつけるポイントを熟知しています。第三者である塾の先生からの承認が、お子さんの人生を大きく動かすスイッチになる瞬間を、ぜひご体験ください。お待ちしております。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次